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日々雑感
幸せは日々の雫のような時の中にある。
毎月の、つれづれなるままに……
2013.03.20 Wednesday

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心弾む初体験

  スマートは小型で、ドイツ車らしい実質さが特徴的で夫はおおいに気にいっていた。2代目が改良され600ccが1000ccになり左ハンドルが右ハンドルになって出たときに迷わず一代目を手放し2代目に乗り換えた。
「しまったなあ、一代目は無骨で質実剛健、おもちゃみたいで、あれがよかった」と乗り換えを後悔している。
 私は免許取得以来オートマチックの楽な車しか乗ったことがない。無骨の質実剛健に乗る気は毛頭なかった。
2代目も私から見るとやっぱり難しい、坂道で下がりかけるし、
がたがたにぎやかだし、バックは首を伸ばして後ろを確かめなくては危険だし、道路の状態はそのまま体に伝わるクッション性。
日本製の静かで超親切、前を向いたま画面に映る後ろの風景を見ることができたり、赤色線が車間距離を知らせたりにすっかり慣れた私はスマートには目もくれないでいた。
 そんな私を「ガンちゃん(癌改名)」が後押しした。
一人で軽やかに散歩気分で石見川あたりに行きたいし、大切な
小粒の時間の足代わりにと俄然私のスマート株は揚がった。
 通院の際、練習することにした。初体験は不思議と心弾む。
あれほど便利が上々だった日本製よりスリリングで乗っているというのが実感できて面白い。夫が鼻歌まじりで和歌山までの道中を走っていたのが分かる。 私も「春はスマートに乗って」といきましょう。
 初体験は「ガンちゃん」とともに術後の私の生活を一変させた。
早寝早起き、整体、ラジオ体操、玄米野菜が大好きになった。
野菜は水につけて生き返らせたり、乾燥させたり、蒸したりしてひげ根まで無駄にしなくなった。いとおしいのだ。
あれこれ料理を工夫するのが楽しい。最近のヒットはふきのとう味噌、春のにがみに舌鼓をうっている。
 初体験まさには、化学療法という抗がん剤の点滴だ。副作用
あれこれは、またご紹介するが、投与後1ヵ月頃脱毛が始まるという予測どおり卒園式の前日から始まった。
「それなら尼さんはいかが」とユーモアで励ましてくださる人にも後押しされて、早速美容院へいった。長い間抜けて行くより先回りしてスキンヘッドもいいなあと思った。
アメリカですてきな癌闘病中の女性に会った。スキンヘッドにピンクの可愛い帽子がよく似合っていた。絵を描いて治療中の辛さを乗り越えると言っていた。
 初体験の超ショートカット丸々坊主顛末はこんな風であった。
心地よく迎えられ、カーテンで仕切ったコーナーに座る。
「尼さんのように」とお願いする。免疫力が落ちているので刺激をあたえるのはよくないだろうし、美容院では剃ることは出来ないからと適切なアドバイスがあって、まず刺激のないシャンプーで優しく丁寧に洗ってくださる。気持ちがいい。そして鋏が入る。
全体に短く、なかなか手間のかかることだ。頭のてっぺんがモヒカンの様に立った。「すてき!」思わず声がでてしまった。そのモヒカンも切り揃え、次は櫛を当てながらほんの1、2ミリほどを残し鋏があたる。小さなバリカンも活躍して細かい髪がどんどん床に溜まる。すっきりしてから再びシャンプー、できあがりと相成る。
 鏡に映る私の顔が母に似ていて驚く。よく笑う母だった。
大正生まれ、戦争を乗り越え肝のすわった母の笑顔だった。
被っていった帽子が一回り大きく感じる。ブラウン系のキャップ帽を美容院で買い求めインナー帽子にすると丁度よくなった。さて初丸坊主の寒いこと、帽子は手放せない。

 夫は、だまってそっと撫でてくれた。「おっと、観音様」パンパンと拍手は一寸行き過ぎではあります。
 

 
 
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