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日々雑感
幸せは日々の雫のような時の中にある。
毎月の、つれづれなるままに……
2009.04.01 Wednesday

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山笑う季節

 木々が萌えだし匂いたち若々しい緑に覆われるこの季節が嬉しい。
千代田台の我家から観心寺保育園まで、この道中、車を駆って20分ほどがたまらない幸福感に満たされる。
我家を出てバスどおりにでる。
寺ヶ池公園に、夫の好きな欅がある。冬の枝ぶりも堂々としていていいが、今は一気にエネルギーを放出し瑞々しい緑に湧き立っている。
交差点を下る寸前,岩湧山に挨拶、「いい朝ですねえ」
「さわやかな、お天気ですねえ」そして深呼吸はいつもの癖だ。
中学生が登校している.君たちにふさわしい季節、胸を張れ、この緑を信じて若い季節を惜しむのだ。
  さて、私は老いをこの緑の匂いに包まれてさっきの深呼吸で透き通らせる。
本多町の交差点から陸橋に差し掛かるといつも正面に見えた桜の木々も今は緑の山波に変わった。
ガードをくぐり極楽橋、石見川の流れを確認、水に映しだされた空、カーブを右にとり、いよいよ両側を木々に囲まれた310号線となる。
この路線の南海バスに初めて乗ったとき、もう40年ほど前のことになるが遠い遠い他国を走っているような気分になった。
河合寺あたりから道路下の畑にエンドウの花が見えたりする。
昇條坂に差し掛かると木々は鬱蒼とし車は木々に包まれた気分になる。この変化がまた新鮮なのだ。
制限時速は40キロ。時々びっくりするようなスピードを出している車もあるが、おおむねこの沿線では安全運転が多い。
さて葛の口あたりで視界は広がり金剛山が見える。雲がかかっているとか、雪だろうかとか山を見て考える。杉の木が一気に増える。花粉の頃は黄色い風塵がおこる。くしゃみがあちこちで聞こえる。
それでも風が杉の山を吹き渡っていく姿は好きだ。どどうどどおうと道を掻き分けて行くようで、今あそこを風が通ったとみえるから。
丸山公園が左手、子どもたちの散歩コースだ。
寺元の交差点に差し掛かる前に山はお寺の向こうにくぐもっていき見えなくなる。
そして観心寺、境内のこの高くそびえる木がなければ、井戸がなければ、透き通った凜とした空気がなければ、私は今ライフワークとする保育の仕事に就かなかっただろう。
駐車場に入る寸前園舎と屋根越にみえる大きなもみじばすずかけの木を見る。日々色合いを変化させていくこの木は,この木の下に立つ人間を励まし、ほっとさせる。
車を停めて周囲を見渡す。あるときは登園の子どもとお父さんが遊んでいらしたり、朝ご飯をお弁当にして川辺で召し上がってする至りもする。そんなことをしてもいいなあと思わせる風景なのだろう。
古い葉と新しい葉が入れ替わりひらひら春の落葉がここかしこに散っている。「せんせい、妖精さんが染めた葉っぱほらきれいやろう」
きのうのおみやげはこの木のお店だったのだ。
奢莪の花が遠慮がちなほんのり薄紫色でこの季節を謳歌している。
子どもたちに見つからないようしずかに密やかに咲いている。
車は木々に排気孔をむけないように停車する。
折角季節を教えてくれているのに申し訳ないからだ。
どくだみの群生を喜ばれた人がいた。少しくださいとのこと、虫さされに効くので煎じてお酒につけようと思ってと仰る。 
  昨日の子どもたちの散歩ではたくさんの蓬を摘んできた。
どうやら草もちの材料らしい。
  嬉しい季節だ。風薫る季節だ。山笑う季節だ。
世界が緑になる季節だ。

 

 
 
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